01歌い手から、婿へ
埼玉の路上で、相方と二人、ギターを抱えて歌を届けていた ── そんな若き日の私にとって、青森への"婿入り"は人生最大の転機でした。結婚の話で訪れた席で触れたのは、110年以上続く暖簾の重みと、それを次へ繋いでいこうとする家族の願い。その空気に触れたとき、覚悟が定まったのです。歌い手の道から、歴史ある商売を背負う道へ。それが、私の選んだ新しいステージでした。
021円にも満たない世界で
道は決して平坦ではありませんでした。2015年に専務として入社してからは、泥臭い修行の毎日。レジ袋や割り箸など、1枚が1円にも満たない備品・消耗品が、飲食店の営みを静かに支えている ── その緻密な世界を、配達の車に乗り、膨大な商品知識を叩き込みながら学びました。知り合いのいない地域の会合へも、一人で飛び込んだ。この積み重ねが、今の私の土台です。そして2021年、社長に就任して確信したのは、備品卸という仕事が持つ"本当の価値"でした。
飲食店の利益を守っている。」機械的な通販には真似できない"接客"こそ、114年の真骨頂。
03縁の下の力持ちとして、全国へ
昨今の人件費や食材費の高騰は、飲食店にとって死活問題です。ですが私たちは、洗剤や消耗品のメーカーを見直し、1円単位で経費を削る提案ができる。ネットで商品を探す手間を省き、プロの目でサンプルを届け、膝を突き合わせて相談に乗る ── この"接客"こそ、機械的な通販には真似のできない、114年で培ってきた私たちの真骨頂です。今、この価値を青森から全国へ広げるとともに、自社の蔵を改装し、厨房を備えた"開業支援のハブ"を創るプロジェクトも動き出しました。補助金からメニュー開発、デザイナーの紹介まで、飲食店が生まれる瞬間から伴走し、地域に良い循環を生み出したい。暖簾を背負う4代目として、私はこれからも、全国の飲食店の現場を支え続けます。
本編に書ききれなかった話
PROFILE

東京生まれ、埼玉育ち。シンガーソングライターとして活動したのち、"婿入り"を機に青森県八戸市へ移住。2015年、1912年創業の中居食品容器株式会社に専務として入社し、2021年に代表取締役(4代目)就任。飲食店向けの備品・消耗品卸を軸に、1円単位の経費削減提案や、蔵を活用した開業支援のハブづくりに取り組む。BNIを通じて全国へネットワークを広げている。
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